【母の徳 1】
世に母の徳ほど尊く懐しいものはあるまい。
母は子を生み、子を育て、子を教え、苦しみを厭(いと)わず、
与えて報(むくい)を思わず、子と共に憂(うれ)え、子と共に喜び、
我あるを知らぬ。
夫に添うては夫をたて、夫の陰に隠れて己(おのれ)の力を竭(つく)し、
夫の成功を以て己みずから満足している。
夫や子が世間に出て浮世の荒波と戦っている時、
これに不断の慰藉(いしゃ)と奮励とを与える者は母である。
夫や子が瞋恚(しんい)の炎に燃え、人生の不如意を嘆ずる時、
静かな諦観(たいかん)と久遠(くおん)の平和とに導く者も母である。
*慰藉…なぐさめ *瞋恚…怒り
*不如意…思うようにならない
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